第二章

 

「今日は愉しかったぁ〜。送ってくれてありがとう! また明日ねっ」
 今日は日曜日。トモコは一日、カレシの健太とドライブして各所を回っていた。
「ああ、お前もバイトがんばれよ!」
 走り去る乗用車。その後ろで、トモコはいつまでも手を振っている。
「よぉーっす」
 その背中を、いきなりバン! と叩く手。
「ひゃうぅっ」
 びくっと肩を震わせ、振り返るとそこには圭子が立っていた。
「も、もう! 圭子さん、驚かせないでくださいよぅっ!」
「あはは、ゴメンゴメン。わたしは仕事上がりでさ、ちょい開放感に浸ってたってわけ。………今のが、ウワサのカレシ?」
「え、は、はい」
 こく、と神妙に頷くトモコ。
「へぇ…………結構、カッコイイ系じゃん。ちょい、芸能人の●●に似てなくない?」
「えぇえ、そんなカッコよくないです。普通ですよ」
 顔を赤らめ、トモコはぼそぼそと言った。
「ま、いいや。どーせわたしにゃ関係ござんせん、と。じゃ、わたし帰るけど、仕事がんばって〜」
「はーい、圭子さんも、お疲れさまでしたぁ」
 手を振る圭子に別れを告げ、トモコは2週間目になるバイト先のファミレスへと入っていく。

 

 

「今日から研修なしの実戦だね。ま…………とはいっても、やる事変わらないし、神谷さん、飲み込み早いから」
「え、そんな事、ないですよぅ」
 木下店長の言葉に、いちいち反応して赤くなるトモコ。
「あ、そうそう。この右端のコーラ機、出たり出なかったりでちょっとお客様からクレームが入ってさ。本社から代わりのくるまでキッチンの方に移動させたから。まだ中、冷えたの入ってるから、ま、喉乾いたら飲んで」
 そういう店長も、コーラの入ったコップをぐい、と口にあてる。
「中、暖房けっこうキツいから」
「はい、ありがとうございます」
 トモコはタイムカードを押して更衣室に入り、着替えてから時間を見て、急いでトイレに駆け込んだ。

 
(誰にも言えない秘密………)

 
 それは、バイト前のトイレタイムだった。
 バイトをするのはこのファミレスが生まれて初めてだったが、その緊張のせいか、トモコは仕事に入る前、トイレに入る癖がついてしまっていた。ただ、トイレに入るだけではない。

 
「あ、あふぅううっ、おぉおおっ、おほぉおおっ………」

 
 普段なら、絶対出さない声。

 極太の便が、トモコの窄まりを極限にまで広げ、じわ、じわ、と肛門から排出されていく。

 今まで、こんな太いモノは出なかった。

 便秘というわけでもないのに、何故かここ2週間ばかり、便が異様に硬く、そして太くなっているような気がする。

 
(OLとかってみんな便秘だっていうけど、これもその一種なのかなぁ)

 
「あぁあああ、うぅうぅうん、あはぁ…………………ほぉおおおっ………」

 
 問題は、この『排泄』がクセになってしまっている事だ。

 肛門が広がったまま、ちょっとずつしか出てくれないもどかしさ。

 その、じわじわ感、肛門の拡張感が、恐ろしいほど気持ちいい。

 
「んんん、あはぁ…………ほぉおうう、ああ、あああ、はぁあ〜んッ

 
 ぽちょん

 
 抑えようとしても、どうしても声が出てしまう。排泄した瞬間がまた最高なのだ。暫くジン………とその感触を噛みしめつつ、両手を胸の前でぎゅっと握りしめて快感の余韻を味わうトモコ。
 震える指で、ウォシュレットのボタンを押す。

 
 しょわわわわわー………

 

「あぁひぃいっ………いぃい…………」
 自宅はウォシュレットだが、このレストランのそれは少し感じが変わっている。水しぶきが肛門とは別に、彼女の秘唇にも当たるのだ。おそらくどこか壊れているのだと彼女は思っていたが、この女の部分への刺激、ことにクリトリスを集中的に水で弾かれるのが病みつきになり、最近では3つある個室のうち、この便座のみを愛用していた。

 
(わたし………ちょっと、インラン、なのかも)

 
 水で濡れた秘部と尻を紙で拭き取りながら、トモコは軽い自己嫌悪に陥る。
 

 

 

 

 

 その夜は、日曜日だけあってなかなかの混み具合だった。

 トモコも、他のバイト達も忙しく働いている。やがて混雑時が過ぎ、夜の9時。あと1時間ほどで今夜の仕事は終わりだ。

 
(あぁ〜…………しんどかったぁ)

 
 暖房の強い店内。忙しく動き回ると、喉が渇いてきた。
「あ、そうか」
 ふとトモコは、シフトに入る前、店長が言っていた「飲んでも良い」コーラのことを思い出す。

 
(あんまりコーラは好きじゃないんだけど………)

 
 とにかく冷たいもので喉を潤したかった。

 キッチンに入ると、調理の人がチャーハンを作っている。トモコはコップをとると、奥に回されたコーラ機にそれをあて、しゅわわわと黒い炭酸水を注ぎ入れた。
「じゃ、いただきます」
 ぐいっと、それを一気にあける。
「…………ふー」
 喉を冷たい液体が通過し、トモコは心底救われた気分となった。
 気を取り直してもう一仕事、と店内に向かおうとした時、不意に彼女はお腹のあたりがグルグルと痛み出すのを感じる。

 
(え、ウソ)

 
 そのギュルギュル感は壮絶で、1分と待てないほどせっぱ詰まったものだった。

 

(まさか、ここのコーラ、腐ってたとか? え、コーラって腐る? 違う、店長も飲んでたけどなんともなさそうだった。冷たいモノが駄目だったの? あ、あぁ、あああああ、も、もう駄目ッ!)

 

 彼女は脂汗で顔をびっしょり濡らし、半ば駆け込むようにして女子トイレへと向かった。
(トイレ、トイレぇっ!)
 手前の2つは使用中で、一番奥の、トモコ愛用の場所だけが空いている。
(トイレぇッ!)
 ダッシュで駆け込み、半ばスカートの中でパンツをおろしながら便座へ腰掛け、バタンと扉を閉めた。

 
 ジャー

 
「は、はおぉぉおお………」

 流水で音を消し、気持ちよく肛門を解放しようとしたその刹那!

 
「!」

 
 トモコの口が、何者かの手で塞がれた。

(誰っ!?)
「出してみろよ」
 男の声。最初から個室に潜んでいたのか。見知らぬ、サングラスをかけた太り気味の髭の男。

 
(知らない人、だれ? 変質者? あぁあ、出る、出る、出るのにぃいっ)

 
 男が手を離しても、口の塞がれた感じが残っていて声が出せない。

 ガムテープ!

 そう気づいた時にはすでに遅く、彼女の両腕は男の手にがっちりと握られていた。
「見ていてやるから、早く出せ」
 信じられないことに、男はトモコの手の動きを封じたまま、スカートの中に頭を突っ込んだ。

 パンツをおろし、排便直前の処女のすべてが、今、この見知らぬ男に晒されているのだ。
「結構、毛は濃い方だな」

 
(い、いや、いやぁああ、やめてぇ、見ないでぇええっ!)

 
 男性経験のないトモコからすれば、これは言語を絶するような恥辱だった。

 見ず知らずの、女子トイレに潜んでいるような変態に、自分の秘所があますところなく観察されている。

 そればかりか、その肛門は、今にも爆発しそうな状況なのだ。

 
(だ、だめ、だめ、ダメダメダメダメぇえ〜ッ)

 
 鼻息を荒げ、必死に抵抗するトモコだったが、男の手はがっしりと彼女の手を掴んで離さない。

 男の顔と身体が間に入ってきているので、開いたまま足を閉じることさえできないのだ。

 生まれてこの方、最大限の努力を振り絞って、トモコは肛門を締め上げ、迫り来る排泄欲と戦った。
「よし…………じゃ、これでトドメだ」
 がりっ

 
「ッッ!!!」

 
 トモコの目が限界まで見開かれる。

 なんと、スカートの中に頭を潜らせた男が、彼女のクリトリスを皮の上から噛んだのだ。

 陰核から猛烈なインパルスが走り、それは彼女の脊髄を貫いて、脳天に到達した。

 瞬間、脳裏が白紙となったトモコは、すぐさま絶望に身を捩らせる。

 
(あぁああああああああああ〜っっっっっっっ!!!!)

 
 ボブブビビビビュウウウッ!  ビュチュッ! ブリュリュリュリュウウウゥウウゥッ!

 

 半液状となった爆弾のような便が、トモコの肛門を断続的に押し広げ、ブパッ、ブパッと派手な音を出して便器内に飛び散った。

 一度弾けた便意は、とどまるところを知らない。

 

 バイト先のファミレスの個室。

 腹痛をおぼえて入ったトイレ。

 待ちかまえていた男。

 

 そんな男に口を塞がれてスカートの中に顔を突っ込まれ、女の大事な部分と共に、恥ずかしいゲリ便の排泄シーンまでくまなく目撃されるという、さっきまでの彼女には考えもつかなかった異常状況のただ中、トモコはショックで惚けたような表情を浮かべ、なおも派手な音を立てながら、どぼどぼと肛門から排泄物を垂れ流していた。

 

 

 


 

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