第三章

 

 

「よぉ………」
 三浦公園には、案の定、山岡が1人でベンチに腰掛けていた。

 

 滑り台、ブランコ、砂場、そしてベンチ。他には何もない。

 都市部にありがちな、貧弱な公園だった。

 美和子はその公園の入り口で立ちつくし、山岡の方を険しい顔で睨んでいる。
「…………来たけど」
「ああ、来たな」
 山岡は立ち上がり、ふざけた口振りで美和子に歩を進めた。
「ま、来るしかなかっただろうが」
「何が目的なの?」
 負けてはいけない。美和子はそう自分に言い聞かせ、強い視線を山岡にぶつけた。
「さぁ〜。何が目的なんでしょーねぇ〜………」
 そらっとぼけて、山岡は夕空を見上げる。

 この三浦公園は、美和子達が通う高校から、少し離れた場所にあった。

 通学ルートから少しずれているので、他の生徒が通りかかる気遣いはない。

 2人以外には、誰もいなかった。
「ま、こんなとこで立ち話もなんだ。第一寒いしよ………中で話そうや」
「な、中って………」

 しかし、美和子の問いには答えず、山岡はずんずんと彼女を横切り、公園の外へと歩いていく。

 何の事か分からず、しかしそのまま放っておく訳にもいかずに、彼女もまた山岡の後に続いた。

 
 少し歩くと、路肩に一台の大きなワゴン車が停めてあった。

 
「これ、オヤジの車なんだわ。中にジュースとかあるし、とりあえず中、入ろうや」
「そ、ちょっと、そんな………」

 
 美和子は身の危険を感じた。

 

 誰にも相談せずに来たのは間違いだったかも、と後悔しだしてもいた。

 しかし、相手が握っているネタは、自分と、そして他ならぬ恋人ハルキの将来をもメチャクチャにしかねないほど危険なものだ。

 もとより、相談などできるわけもない。

 ハルキに相談したら、きっとサッカーなんて辞めてやると言うだろう。

 そんな事だけはさせられない。

 
「乗る前に言っておくけど」

 
 努めて静かな口調で、美和子が言った。

「なんだよ」
「わたし、京子と明香と、今夜の8時に、カラオケ約束してるからさ、話なら早めにお願い」
「…………あっそ」
 にや、と笑い、山岡は先にワゴン車のサイドドアを開き、中に上がり込む。

 美和子は一瞬躊躇したが、決心して山岡に続き、乗り込んだ。

 
 シャッ、バタン!

 

 スライドし、扉が閉まる。

 中は結構広い。

 ことのほか天井が高く、ワゴン車というよりは、むしろキャンピングカーといったような佇まいだ。

 山岡は丸テーブルのある椅子に座り、彼女はそのテーブルを挟んだ反対側に腰掛けた。

 小さな車載冷蔵庫を開き、山岡は中からビール缶を2つ取り出す。
「ちょっと、それ、お酒じゃない!」
「なんだ、飲めないのかよ。ちぇ、じゃぁ………あとはオレンジジュースとかしかないぜ」
「じゃ、それでいい」
 渡されたオレンジの缶ジュースを手に取り、タブを開いて美和子はちびちびと口をつける。

 山岡はというと、ビール缶を豪快に一気のみし、ぐしゃ、とカラの缶を握り潰した。
「ぷはぁ! うっめぇ〜………ふー。で、よ。高橋。ここに来たって事は、分かってるとは思うが、昨日のオメーらの事だ」

 
 どきん。

 
 美和子は心臓が大きく一回打ったのを感じた。

 覚悟はしていたものの、やはり面と向かって言われると堪える。
「あんま、クラスとかじゃ、オレの家の家業って言ってねぇから誰も知らないだろうけどさ、ウチな、実はオヤジ、ラブホ経営してんだわ」

 
 ラブホ…………ラブホテル?

 
(まさか…………)  
 美和子の顔から、血の気が引いていく。

 
「ま、でな。昨日なんか日曜日じゃん? バイト雇うぐらいならって、息子のオレも仕事、駆り出されたりすんだよ。ま、とはいっても雑用はゴメンだからな、オレの仕事はもっぱらモニターチェックよ」
「モニターチェック?」
「知ってんだろ、ああいうホテルってのは、あれだ、犯罪とかにも利用されやすいから、カメラで各部屋が監視できるようにできてんだよ。ま、部屋の中は見てないっつー建前だけど、ウチの場合はそれでビデオとか作ってる手前、バッチリ1部屋につき、8方向から構えてるわけよ。お前、結構毛深いよな」
 途端に、美和子の顔がかぁーっと赤くなった。

 

(見られてる。全部観られている。こんな気持ち悪い男に……)

 

 少女は、悔しさのあまり涙目になっていく。
「オレのにらんだ通り、いい身体してたぜ。右の乳首はちょい陥没してたけどよ、ハルキの祖チン入れられてる時のお前も、サイコーに可愛かったし」

 
 恥ずかしい。

 

 何故だか、すごく恥ずかしくなっていく美和子。

 もちろん、セックスの、しかも初体験の場面を全て見られていたのだ。恥ずかしくて当たり前だ。

 しかし、彼女の恥ずかしさは、彼女自身、自覚していないところから湧き上がってくるものだった。

 
(変だ、わたし…………変だ)

 
 美和子は自問した。
「変な感じか?」

 
(どうしてわたし、こんな……………………ドキドキ、してるんだろう)

 
 山岡の声。いつのまにか、相手は彼女の隣の椅子に移動してきている。
 肥満の顔が近づいてくる。

 
(近づいてくるよ。気持ち悪い、大嫌いな、山岡の顔。逃げなきゃ………逃げ………)

 
 美和子が動こうとする前に、素早く山岡の両腕が少女の背中に回され、唇が重なった。
 強襲。
 美和子の口の中に、にゅるっと山岡の舌が侵入する。
「むふぅっ」
 彼女は嫌悪のあまり、両手で相手の肩を掴み、爪を立てて抵抗する。

 がっしりと抱きつかれた身体は、びくりともしなかった。

 

 愛情の交換ではない、一方的な侵略行為。

 

 無遠慮に挿入された山岡の舌が、美和子のそれを根本から先端まで、螺旋を描くようにして、何度も何度も丹念に撫であげ、歯茎の裏、唇の裏側などに至るまで、ゆっくりと、ゆっくりと、時間をかけて舐めしだいていく。

 
「ふぅ………むふっ……………ふぅっ」

 
 美和子は、口の中の山岡の舌を噛んでやろうと思った。

 が、今朝この山岡から聴かされた「初体験の時の音声」を思い出し、考えを改める。

 
(ここはガマンしよう。気持ち悪いけどガマンして、やり過ごせば大丈夫。カラオケの約束のことも伝えてあるし………)

 
 覚悟を決め、美和子は身体の力を抜いた。
(飽きるまでやらせて、服に手が伸びたらその隙をついて離れよう)

 
 ぶちゅ………ちゅば………ちゅ、ちゅぶ…………ちゅ…………ずちゅ…………

 
 山岡のキスは粘着質で、執念深く、そしていつまで経っても終わらなかった。
 美和子と山岡の唇は、まだ繋がっている。

 舌と舌が絡まる。

 いつの間にか、美和子は山岡の舌の動きに、応えるように自分のものを動かしていた。

 
(い、いつまで…………やる気…………?)

 
 山岡が彼女の唇を塞いでから、もう 10分近い時が流れている。

 

 ぷちゃ……………ちゅ、くちゅ…………ぷちゅ…………ずる…………

 
(ま、まだ……………………まだ、なのぉ………?)

 

 15分…………

 

 美和子の眼が、とろんと半開きになってきた。

 無意識のうちに、自分の腕を山岡の背中に回してた。

 

 20分…………

 
 ぐびゅ………ちゅ、ぴちゅ…………ちゅびゅ…………ぴちゅ………

 
(こ、こんなキス、初めて………)

 
 美和子にしても、ディープキスの経験は、まったくない訳でもなかった。

 実際、昨日のハルキとの初体験の折り、かなり濃厚にお互いの舌を絡め合った。

 とはいえ、それらはせいぜい、20秒、長くても30秒程度のもの。

 口から涎が溢れ、服の胸元を汚している。

 山岡の汚らしい唾液が、彼女自身のものとねっとり混ざり合い、すでにどっちのものか分からなくなってきていた。

 山岡の獣のような匂いが、嗅覚を麻痺させている。

 がっしりと肩を抱かれ、服を着たまま互いの身体を密着させ、

 

 ぶちゅ………ちゅば………ちゅ、ちゅぶ………ちゅびゅ…………ぴちゅ………


(はぅ…………あぁ……………………は…………)

 
 彼女のパンツの中では、秘唇がじっとりと湿り気を帯び始めていた。

 

 

 

 

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