第二章

 

 

 

 

 家族、友人達に送られて、正太郎と美奈穂は、ハワイへと向かう飛行機へと乗り込んだ。
 
 ゆく先は、オアフ島。
 
「わたし、外国にいくの、はじめて」

 
 美奈穂は、うきうきした声で、隣の座席に座る正太郎に言った。
「おいおい、ちょっとは寝ておかないと………5時間の時差だって馬鹿にならないぜ」
 正太郎は苦笑しながら、彼女の頭を撫でる。
「大丈夫よ、5時間かけて、5時間時差のあるところへ行くわけでしょ? 日本を6時半に出たから、向こうについてもまだ6時半」
「でも、向こうに7時前についた頃には、俺達の身体は夜の12時前だ。今日だって、披露宴や何やで結構疲れてるんだろ。いいから寝とけって」
「ん…………」
 美奈穂は、正太郎の手を握って頷いた。
「でも今夜は眠らないよ」
 そういって、彼女は笑う。

 
「ぜったい、眠らない」

 

 

 

 

 

 

 

 2人の座席の10列後ろでは、やはりカップルと思われる男女が並んで座っていた。

 

 1人は、鈴木涼子。

 

「────────今夜はきっと、わたし、眠れないでしょうね」
「ほう? そりゃ一体、どういう心境で」
「もちろん歓びでよ」
 言って、彼女は隣の男を見る。
「ついに、正太郎と1つに繋がれるんですもの。それも…………最高のシチュエーションでね」
「………へ、怖い女だ」
「ええ、そうよ」
 涼子は頷く。
「自分でも怖いぐらい、正太郎を愛してる」
「本当に『アイシテル』んだったら、こんなヒドイ事するかねぇ?」
 男は雑誌を片手に、半笑いで呟いた。
「貴方は、人を好きになったことってあるの?」
 涼子が尋ねる。
「あぁ…………女はみんな大好きさ。特に、俺のチンポにひれ伏す女はみぃーんな、な」
「ふふ」

 綺麗な瞳を半月状にして、彼女は薄く笑った。

 

「だから貴方を雇ったのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正太郎と美奈穂は、予定通りホノルルへ到着した。

 
 疲れていたせいか、機内では2人ともよく眠っていた。
 タクシーに乗り込み、正太郎は流暢な英語で、予約してあるホテルに向かうよう頼んだ。
「わ、カッコイイ。英語喋ってる」
 美奈穂が茶化す。
「あのな…………俺、外資系の銀行勤めてるんだよ? 英語なんてトーゼンだよ。うち、フランス系だから、フランス語下手でよく叱られたりはするけど………」
「正太郎、フランス語、得意だったじゃない」
「そりゃ、その辺の学生よりは上手いさ。でも相手は、それが母国語だからなぁ」

 

 

 やがて、タクシーがホテルの前に到着した。
「ここだ」
 運転手にチップを払いながら、正太郎。

 
「わぁ…………」

 

 夜空をバックにそびえ立つ高層。

 ここで、2人は今夜、運命の結合を果たすのだ。

 

(ここで…………エッチしちゃうんだ…………)

 

 ごくっと美奈穂の喉が鳴った。

 

 チェックインを済ませ、2人は背の高い白人ホテルマンの案内で、エレベーターに乗り込む。
 高鳴る鼓動。
 
(や、やばい………)

 

 美奈穂は、自分の秘所が、かなり濡れてしまっていることを自覚した。
 股間の湿り気が、下着に染みをつくっていることは間違いない。

 

(い、いやらしい娘だと思われたらどうしよう…………)

 

 エレベーターは9階で止まり、2人は部屋へと通される。
 カタログで見た通り、広くて綺麗な部屋だ。
 ホテルマンは正太郎からチップを受け取ると、お辞儀をして部屋から退出した。
「…………ん、とりあえず、どうする? ハラとか減ってない?」

 正太郎が、ベッドに腰掛けて尋ねる。

「んー…………今、あれでしょ。日本時間で真夜中。こんな時間に食べたら、太っちゃう」
「太った美奈穂ってのも、可愛いだろうな」
「ばかっ」
 美奈穂は頬を膨らませて、彼の肩を叩いた。

 

 部屋の柱時計は、8時前を指している。

 

 まだ、2人はその時、幸せだった。
    

 

 

 

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