第五章

 

 

 

 レイファは1人自室に篭もり、鏡に映った自分の顔を見つめていた。
 醜く焼けただれた、顔面の左半分。

 眉毛も睫も全て失われ、目玉は白く濁り、すべすべだった頬には無数の染みが浮き上がっている。

 前髪でそれを隠せば、彼女は今でも絶世の美少女だ。

 が、それは見せかけに過ぎない。

 
「汚い顔………」

 
 その瞳に、うっすらと涙がにじんでくる。

 彼女の作戦は全て成功し、ゲスな山賊への復讐は着々とゴールへ向かっていた。が、それがどうなるというのだろう? 連中に地獄の苦しみを味わわせてから皆殺しにしたところで、レイファの焼けただれた顔は、永遠に元には戻らないのだ。そう思うと、少女の心に、言いようのない悲しみが押し寄せてきた。肩が震え、歯はガチガチと鳴り、足がかくかく上下に動き出す。

 
 神様、わたしが何をしたっていうのですか?

 
 どうしてこんな目に遭わなければならないのですか?

 
「レイファ」

 

 声がして、少女はびくっと反射的にその方向を見た。
 レイファの私室の入り口付近で、全裸の少年が佇んでいる。基本的に、屋敷の中では彼女達は服を着なかった。その理由の1つは男達に傷つけられた身体を敢えて晒すことによって、復讐の炎を絶やさない為。もう1つは、「服を着て恥ずかしい部分を隠す」という、女としての弱い部分を否定する為だ。無論、捕虜である少年に、衣服の着用許可などない。

 
「キニー…………どうして」

 
 一階の小部屋に軟禁されているハズの少年。

 捕虜である彼が、自分の意志で屋敷内を徘徊する………

 これは彼女達に、反逆の意志ありと取られても弁解の余地のない無謀といえる。
「は、早く! 早く小部屋に戻りなさい! ニナ達に見つかったら、本当に去勢される!」
「ん、その、ニナさん達に言われて、ここに来たの」
 後ろでに扉を閉め、少年はゆっくりとレイファに近づいてきた。
「なんだか、今日は様子がおかしそうだから、見てこいって」
 レイファはそれを聞いて歯がみした。

 不覚だった…………集団の長である自分が、彼女達にそれと悟られるほど、弱みを表に出していたとは。
「なんでもない。大丈夫よ、あなたも早く部屋に戻りなさい」
「うん、でも、一言だけいい?」
「…………なに?」

 
「────────レイファ、とっても綺麗だよ」
 真顔で、キニー。

 
「ばっ………」
 レイファは顔を赤らめ、勢いよく少年に体当たりした。

 倒れた少年に馬乗りになった少女は、キニーの喉もとを両手で掴み、その顔を近づけて吼える。
うそつき野郎がッ! あんただって、思ってるんでしょぉおッ? あの悪魔共に面白半分に焼かれた顔を見て、汚いってぇッ!
「レイファ」

 少年の胸板に、レイファの涙が落ちた。
「ほら、ご覧よ、あんたのクソ親父にメチャクチャにされたレイファさんの顔をぉっ! か、怪物よ、こんなの………気持ち、悪い……………………ばっ、化け物みたい、な、あぁ…………うぅう、ああああっ………あああああああああああああ……………」

 彼女はしばらくそのままの体勢で、身体を震わせて静かに泣き続ける。

 キニーは一切抵抗せず、ただ少女の顔を見つめていた。

 

 10分も経った頃─────

 ようやく落ち着いたレイファの顔を、キニーの両手が優しく包んだ。
 少年の胴体を跨いだ馬乗りの姿勢のまま、少女は泣きはらした目で少年を見る。

 
「もう一度、言うよ。君は、とっても綺麗だ………レイファ」

 

 その真摯な眼差しが、彼女の心を溶かしていく。

 
「………キニー」

 
 2人はそのまま見つめ合い、やがてどちらがともなく唇を合わせた。

 性欲の為ではない、相手への想いの強さがさせる深い、深い包容。

 レイファとキニーは床の上で抱き合ったまま、互いの体温を感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、世話やかせるよ、ウチのお姫様はさ」

 
 廊下を歩くニナが、呟いてからべっと舌を出す。
「あ、ニナ。レイファどうだった?」

「どうだった?」

 通りかかった双子が尋ねた。
「ん、もう大丈夫」
 ニナが片手をあげてウィンク。
「あ、そうそ、ニナ、これ、食べてみない?」
 京香が、手に持った皿のハンバーグを勧めた。
「なにこれ」
「あのゴリラの、チンポとタマキンすり潰して作った、ミンチ肉100%使用のポコチンハンバーグ!
ポコチンハンバーグ!
 双子の声が、綺麗にハモる。
「うげ、いらないよぉ。汚い………」

 ニナは心底嫌そうに首を横に振った。  

 


 

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