第21章

 

 

 病室。

 その扉がノックされ、がちゃ、と開いた。

「やぁ、こんにちは。山下拓郎くん」

「…………へ、へめえぇえ痛ッ………!」

 ベッドの上で、拓郎が叫ぼうとして、苦痛に喘ぐ。

 花束を持って現れたのは、神崎一郎だった。

 

「聞いてはいたけれども、ひどい有り様だね」

 

 一郎の言葉通り、拓郎はボロボロになっている。

 両腕にはギプスがまかれ、上から釣り上げられていた。

 シーツの下から、同じくギプスにくるまれた両脚の先が覗く。

 砕けたアゴには鋼鉄製のコルセットが填められ、頭には包帯が巻かれていた。

 さっき、拓郎の発音がおかしかったのは、歯の殆どを失っているせいだろう。

 ベッドは背中の部分で傾斜し、彼は今、半身を起こした状態になっている。
 もう、自力で起き上がることができないから、定期的に看護士が体勢を変えてやっているのだ。

 

 頸椎損傷。

 

 もう拓郎は一生、首から下が動かせない体となっていた。

 

「自業自得とはいえ…………あの連中も徹底的にやったもんだね。あ、これ、一応見舞い品だから…………」

 言って、一郎は持っていた花束を、近くの台の上に載せる。

「へ、へめぇ…………やっふぁり、へめぇが、一枚噛んれやがったのふぁ…………」

「今朝、意識を取り戻したんだって? まぁ、あれだけの重傷だ…………今、僕に悪態をつけているというのは正直驚嘆に値するよ。お医者さんから、何か話を聞いているのかな?」

「ら、らんの、話ら?」

「まぁいいか…………………僕の仕事でもないし。君は、田中麗香くんに会いたがってたよね?」

「ほ、ほめぇ…………調子に乗ってんじゃれぇろ…………怪我治っはら、真っ先にへめぇのヤサ突き止めれ、殺しへやるふぅうっ!」

「それは怖い。しかしその台詞って、定型句なのかな? 前にも似たような台詞聞いたことが…………まぁいいや。田中麗香くんに会わせてあげよう。ただ、その前に、君に会いたがっている人がいてね」

「?」

「おい、トモヤ、いいぞ」

 一郎の声をうけ、病室に2人の少年少女が私服姿で現れた。

 

「────────へ、へめぇらは」

  

「へぇ、一応、覚えていてくれたんだ。光栄だな」 

「ホント、嬉しいね、トモヤくん」

 トモヤ、そしてカナが、にっこりと微笑んで言う。

 

「意外にも君の記憶力が良くて助かったよ。そう、この2人は、前に君とその仲間に襲われたカップルだ。僕はこのトモヤの不肖の兄でね…………個人的にはまったく気が進まなかったのだけれども、まぁ可愛い可愛い弟の為に、ひと肌脱いだというわけだよ」

「あ、兄貴っ」

 トモヤがバツが悪そうな顔をした。

 横で、カナがくすくす笑っている。


 その様子を、呆気にとられてただ見ている拓郎。
 

「で、まぁ最後だから、おさらいの意味で山下拓郎くんにも解説しよう。まず僕は、専門の業者を雇って田中麗香くんを拉致し、山奥のロッジで犯した。特殊な薬剤を使い、彼女の性感を極限に高めさせ、ついでに僕の研究データにも役立てさせて貰ったわけだね。で、後日…………ええっと、今から4、5日前になるのかな? 僕はその時撮影した映像データなどで彼女を脅迫し、再びホテルに連れ去った。そう、あの日、君が踏み込んだホテルだ。そして、麗香くんがあの男達に輪姦されていると聞かされて、君はそのニュースソースの発信源を疑いもせず、まっしぐらにそこへ向かい、4人の友人に暴行を加えた。あれは、でも、やり過ぎだったね…………山下拓郎くん。怒る気持ちは理解できなくもないけれども、友人達の睾丸まで全て破壊したのはやり過ぎだ。ま、睾丸を失ったところで、子孫が残せなくなったり、ホルモンバランスが崩れるといったぐらいで別に即、死に至る怪我ではないが、彼らにとっては重要な器官だったろうからね。君の『暴力』に信奉し、恐怖していた感情を、彼らの『憤怒』と『恨み』の念が押し潰してしまった。入院していた病院を抜け出した4人は、油断していた君を背後から金属バット、鉄パイプで殴りつけ、それこそ殺すつもりで滅多打ちにした。もう少し警察官の駆けつけるのが遅かったら、間違いなく君は死んでいただろうね…………この国の民はあまり警官というものに敬意を払わない傾向が散見されるけれども、これで少しは彼らの有り難みが身に沁みただろう?」

 

「へ、へめぇ…………ここまれの事してくれへ、タダで済むと思っへんのは?」

 

 拓郎が、一郎、そしてその傍に並ぶトモヤとカナを凝視した。

「あのね…………警察に連絡したのは、僕が雇っていた探偵さんなんだよ? いわば、僕は君の命の恩人だ。そんな人間に向かって、それはないんじゃないかな」

「そほのガキ共もら! 今度は俺がお前のマンホに突っ込んれ、孕むまれ中にらしてやるッ…………!」

 しかし、当のカナは笑みを崩さない。

「ふふっ………ほんと、威勢がいいのね」

 少女はつかつかと拓郎のベッドに近づき、その下半身を包むシーツに手をかけた。

「ほんと男らしいヒト……………………もう男でもないクセにっ!

 

 ばさっ

 

 叫び、カナがそのシーツを取り去った。

 必然、自分の下に目がいく拓郎。

 

「ッ! …………な、な…………」

 

 下半身、拓郎の股間はむき出しになっている。

 陰毛は全て剃り落とされ…………

 そして、陰部にあるべき彼のペニス、そして肉袋がない。

 ただ、生殖器のあった場所に、ずぶ、と透明な管のようなものが刺さっているだけだった。

 

「ほ、ほれの…………………ち、チンポが…………」

 

 魂の抜けたような顔で、拓郎はただそうボソリと呟く。

 

「彼ら4人が…………君に去勢されてしまった4人が、君の『その部分』を無事に済ます訳がないじゃないか」

 一郎が淡々とした口調で続けた。

「発見時、既に君の陰茎、そして睾丸は失われていた。警察によると、ナイフのようなもので切り刻まれたらしい。逮捕された4人の供述だと、切除した君の性器は、たまたま見かけた野良犬に喰わせた、との事だそうだ」

 

「ねぇ、山下先輩。そのご自慢のおチンチンで、わたしを妊娠させて赤ちゃん産ませてください。わたし、先輩の赤ちゃん産みたい」

「先輩、カナもこう言っていることだし、遠慮することありませんよ。どうぞ先輩の立派なチンポでカナに好きなだけ中出ししてください」

 冷たい笑みのまま、少年少女のカップルが拓郎に言う。

 

「ほ、ほれの…………………ち、チンポ…………」

 

 拓郎はただ、自分の失われた股間を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゅ、純さん…………ま、まだ、なの?」

「もう少し…………ほら、エレベーターに乗るから、下に気をつけて………」

 

 山泉 純と田中 麗香もまた、拓郎がいる病院にやって来ていた。

 もっとも、麗香にはここが何処かは分からない。

 麗香は、両目を包帯で目隠しされていた。

 家を出る時からずっとこの状態だ。

 純に手を引かれ、車に乗って────────

 

 不安感。

 

 だが、これから一郎のペニスをようやく迎え入れることができる、という期待で、貞操帯の内側の秘芯は、早くもぐちょぐちょになっている。

 視界がきかないから、必然、他の感覚が研ぎ澄まされていく。
 
(………? 大学、じゃない。ここ…………なんか、変な匂い…………保健室みたいな…………)

 

「さぁ、ついた。この階よ…………この先の部屋で、一郎さんが待ってるから…………」

「う、うん………」

「不安?」

「ん…………あ、あのね、ここ…………どこなの?」

「さぁ、どこでしょぉ〜」

 麗香の手を引く純が、悪戯っぽく笑った。

「も、もう着くからいいでしょ? まさか、野外プレイとかじゃないよね? そ、そんなの、恥ずかしいよぉ…………」

「何いってるの。ここ屋内でしょ」

「で、でも…………」

「大丈夫。ちょっとした趣向よ。でも、麗香ちゃん…………これが最後の試練なの。これを乗り越えたら、貴女は自由な女として生きていける」

「自由…………」

 

 自由な女。

 何故か、純が語るその言葉に、麗香は底知れぬ魅力を感じた。

 

 少し歩き、やがて足取りが止まる。

 

 コンコン

 

「先生、山泉です。お連れしましたよ」

「…………あぁ。相変わらずいいタイミングだね。こっちも準備はできているよ」

「はい、じゃあ、入ります」

 

 ガチャ、という音。

 麗香は、視界を閉ざされた中、その運命の扉をくぐった。

 

 

 

 

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