第五章

 

 

 

 そこは、カナ達が通う高校からかなり離れた、山奥のロッジだった。
 驚くべきことに、そのロッジは神崎一郎の所有物だという。

 
「高校の時、ネットで少し稼いでね………」

 
 言葉少なに、一郎が言った。
 カナが聞いたトモヤの話だと、彼は大学一回生のときに友人達と会社をおこし、年収30億の企業にまでしたそうだ。今は研究が忙しくなって経営にはタッチしていないそうだが、稼いだ資金の運用は続けているらしく、若いに似ずかなりの財産家となっているらしい。もともと一郎やトモヤの一家は、早くに父親が事故で亡くなり、そのせいで貧しかったようだが、今では都心部に一軒家を構え、それとは別に一郎は独立して高級マンション住まいをしている。トモヤがこの兄を尊敬し、頼りにするのも無理はない、とカナは思った。

 
 2人は昼過ぎ、一郎の乗用車でロッジに着いた。

 材木の香り漂う建物の中はがらんとしていて、必要最小限の家具類しかない。
「昔の文豪ではないけれどね、集中して論文を書きたい時なんかは、結構ここを使うんだ。文章なんて、どこで書いても同じなんだけど、やはり環境の変化は多少執筆の質や作業効率に影響するらしい。は、は………僕もね、案外フィジカルな人間なんだよ」
「それは、あの、…………………山泉さんと一緒に、ですか?」
 勧められた木椅子に腰掛けたカナは、上目遣いで一郎に尋ねてみた。
「ん? あぁ、そういう時もあるね。実験が必要な時などは、彼女に協力してもらう時も多い」
「お二人は、つきあっているんですよね?」
「んー…………………君が言う『つきあう』の定義がよく分からないのだけれど、少なくとも一緒に遊園地に行って遊んだり、夜、一緒に飲んだりは一切しないね。そもそも僕はそういった遊戯には一切無頓着だし、アルコールも時間がもったいないからなるべく飲まない。煙草は吸うけれど、これも言ってしまえば無駄だね。30になるまでには、禁煙する予定だ」

 
 カナは、そこで話題につまって黙ってしまう。

 
 この神崎一郎という人物は、なんというか、超越している。

 少なくとも、こんな人間をカナは他に知らなかった。

 会って喋った時間はごく僅かだが、それでもこの男が、普通の人間ではないことぐらいは肌で感じ取れる。

 異常という言葉は適当ではない。

 もっと…………カナやトモヤには見えない、普通の人には見えない何かを常に見つめているような。

 
 その時、テーブルに置いてあった一郎の携帯が鳴り出した。

 すぐに手に取り、
「はい、もしもし。…………あ、そう。はい、ご苦労様。はい、分かりました。えぇ………はい、はい。では後はこちらが」
 通話を切って、一郎はカナに向かって言った。
「あと3分したら出よう」

 

 

 

 

 

 

 

 3分後、一郎達がロッジから出ると、ちょうどタイミングよく一台のワゴン車が到着した。

 運転席から、サングラスをかけた、30代ぐらいのガラの悪そうな男が降りてくる。

 カナは反射的に、一郎の後ろに隠れた。
「はい、神崎さん、まいど」
「後金は、月末で良かったんでした?」
 一郎は物怖じすることなく、普段通りその男と接している。
「あぁー………そうスね、今月はねぇ、ちょいゴタゴタありまして………もう、ちょっとだけ」
「そうですか。じゃあ、連休明けにでも振り込んでおきます」
「あぁー、そうして貰えると助かりますわ。ホンマ、いつもどうも」
「いえ、こちらこそお世話になります」
「あ、一応ね、眠らせてありますけどね、目ぇ醒ますとも限りませんよって、目隠しと、あと手と足は縛ってあります。服は、脱がしてっちゅう注文でしたから、折り畳んで紙袋入れときました」
「ご丁寧にどうも」
「いやいや、ほんな、運び入れまっさ」
 男はにこっと笑って背を向け、ワゴンの横扉をがばっと開く。

 中には、言葉通り、全裸で手を後ろに縛られ、足首を括られた、目隠し状態の田中麗香が横たわっていた。

 無造作に転がっている様子をみて、カナは何か、人形を見ているような錯覚に陥る。

 麗香は眠ったまま、サングラスの男に抱えられ、ロッジの中へと運び込まれた。

 

「じゃ、今後ともよろしゅう」

 
 最後にそう告げて、サングラスの男はワゴンに乗って去っていく。
 一郎は麗香を、縛られ、目隠しされた状態のまま、奥の部屋にあるベッドの上に横たえた。

 そこで彼は一旦寝室への扉を閉め、リヴィングに戻り、カナの前に立った。

 

「さて、一応、今後の予定を話しておこう」

 

 まるで大学の講師が授業をしているような口振りで、一郎は話し始める。
「彼女…………田中麗香は、専門の運び屋によって眠らされ、ここまで輸送されてきた。彼女は家を出る瞬間、何者かに眠らされたことしか覚えていない。眠った状態で全裸にしておいたのは、彼女の状況把握能力、及び環境適応能力を測る目的と、単純に彼女に恐怖心を抱かせる効果を期待してのものだ。あっと、言い忘れていたけれど、今から君は、一言も喋ってはいけない。存在を彼女に悟らせるのは構わないし、実験に参加してくれても良い。復讐、という君のテーゼから考えると、参加した方がより目的に沿うだろう。だが、声を出してはいけない。この女性が君の声を記憶している可能性は低いが、万が一覚えていた場合、君が彼女の再復讐の対象となる危険がある。そこまではいいかな?」

 
 カナは無言で、こく、と神妙に頷いた。

 手が汗ばみ、緊張しているのが分かる。

 
「よろしい。では、本日の実験の流れを説明しよう。まず、彼女の縛り付けられている足を解き、M字開脚の状態で膝部分を拘束する。両手は後ろで縛ったままだと、彼女が苦痛を感じ、実験に支障をきたす畏れがあるので、ばんざいの姿勢にしてベッドの支柱にそれぞれ縛り付ける。次に、僕が彼女の女性器に挿入し、膣内に射精する。できれば、眠っている間に挿入し、そこで彼女がはじめて目覚める、といった流れが望ましい。射精後、いったん僕はペニスを引き抜き、彼女と少し対話をする。続いて、全身のペッティングに入るわけだけれど、その際、性感を高める塗り薬を併用する。これは、彼女にそれを使用したと悟られないよう、膣奥から流れる僕の精液、および彼女自身の膣内分泌液を身体に塗りたくる、という行為に交えて行う。彼女の性感を充分高め、何度もオルガズムを体験させるが、膣内は刺激せず、焦らす。彼女が充分追い込まれたと判断した時点で、全身の愛撫を取りやめ、ペニスの先端による、膣入り口付近のみの愛撫に移行。その際、言葉による責めを行い、彼女の精神抵抗力、およびその嗜好を探る。最終的に僕は彼女に再挿入し、再び膣内に射精する。あとは…………ま、その時話すよ」
 カナは、一郎の計画を聞き、その流れを想像して、膣奥がじゅん、となるのを感じた。

 
(オナニー、したい)

 
 少女は、一郎が麗香にそれを行っている間に、ひっそりやってしまおう、と思った。

「さて。じゃあ実験を始めよう」

 


  

 

 

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