第四章

 

 

 連休がはじまった。

 

 世間的には休みだが、神崎一郎は連休初日から大学の研究室で、書類を読んでいた。

 そこへ、扉を叩く音。
「はい?」
「あの、失礼します。前にこちらに寄せていただいた………」
「ん。あぁ、トモヤと一緒に来た…………どうぞ」
 少し間をおいた後、私服姿の少女………カナが扉を開き、入室する。

 その間も、一郎は目を書類に向けたままだ。
「やぁ………で、その後どうかな?」
「どう、といいますと」
「いや、んー………あんまり、こういう事を他人が言うのはどうかと思うが、トモヤとはうまくやっているの?」
 問われ、カナは少し俯き加減になる。
「え、はい。その、フツーに……」
「あ、そう」
 そこで初めて一郎は書類から、視線を少女へと向けた。

「あの、それで、ですね。今日来たのは、その、あれからどうなったのかな、ということでして」
「あれから? …………あぁ、あれね。うん、うまくいっているよ。これ、読む?」
 一郎は手にしていた書類を、少女に投げてよこす。

 カナはそれに顔を向け、目を見開いた。

 
「こ、これ………」

 
 それは、カナを集団でレイプした時にいた、『あの女』………田中麗香の身辺調査の記述だった。

 朝から晩までのここ1週間の行動が、事細かく記録されている。

 どうやって調べるのか、起床時間や就寝時間、朝昼晩の食べ物、トイレに行った回数…………

 おまけに、セックスをした事や、オナニーをしている事までが、詳細に記されていた。

「それね、知り合いの探偵さんに頼んだんだ。はは…………ちょっと、女の子に見せられるようなモンじゃないんだけれど、一応相手の事は良く知っておく必要があったからね。研究対象にするにあたって、データは詳細であればある程良い」

「こんな、どうやって分かるんですか? トイレとか、オ、オナ………」
 言いかけて、カナは赤面する。

 
「んー、どうも彼女は、クリトリス派だね。女性の自慰には無数のパターンがあるけれど、まぁ生殖器のみに限定して大別すると、大陰唇を手で包み込んで揉むタイプ、膣内感覚を重視するタイプ、そしてクリトリスへの刺激をメインに持ってくるタイプ、この3つがある。このデータから推測できることは、彼女、どうもあまり内部の方は開発されていないらしい、ぐらいなものだね。このあたりは実際に検証してみないと何とも言えないけれど、まぁ………事前の参考にはなる」
 女性のオナニー行為について、淡々と語る一郎。
「読んでもらって分かったと思うけれど、現在の、主なセックスの相手は、君を襲った連中のボス格にあたる、山下拓郎だね。ペニスの全長は約13センチ。ま、日本人としては平均かな。トモヤのペニスは16.4センチだから、年齢からいってもやや大きめのサイズに属する」
 カナはそれを聞いて、ごく、と唾を飲み込んだ。
「ト、トモヤ君の…………も、までどうして………」

 言いながら、彼女はあの悪夢の時間の締めくくりのシーンを脳裏に再生していた。

 不良達に抱えられ、無理矢理トモヤの肉槍を挿入された瞬間。

 他の不良達に陵辱されていた時にはなかった、痛みとは違う別の「ずくっ」とした感覚を覚えていたのだ。

 彼女はそれを、トモヤへの自分の好意からきた感覚だと思っていたが、ペニス自体のサイズのせいもあったらしい。

 
(………あの時は朦朧としていてよく見てなかったけど、大きいんだ、トモヤ君の)

 
「トモヤのペニスは、僕のもっとも身近な観察対象だからね」
 一郎が続けた。
「もちろん、トモヤは僕が観察しているなんて自覚していないだろう。僕が大学に入った時、アイツはまだ小学生だったから、観察対象としては及第だった。成長していく過程でそれとなく、皮を剥く事、そして皮オナニーを禁止するよう指導した結果、まずまず想定通りの発育をするに至った。角度や形状も、女性器の内部の、平均的な性感部位にフィットする事が予想される。セックスに対する恐怖心がなくなったら、今度試してみると良い。やや早漏気味だが、1日平均7回もオナニーをしているところから鑑みて、持久力は充分以上備えているものと思われる。高確率で、トモヤのペニスは君に性的満足感を与えるだろう。ただし、サイズがサイズだから、君の性器が馴染むまでは、結合前に、ローションなど潤滑液を併用した方が無難かな」

 
 カナは、黙って一郎の話を聞いていた。

 

 他の人間、他の男からこんな話を聞かされたら、嫌悪感しか感じなかっただろう。

 しかし、目の前のこのトモヤの兄からは、不思議とそれを感じさせない独特の雰囲気が備わっていた。

 淡々としていて、性的ないやらしさがまったくない。

 初対面時でのあのショッキングな映像は今でも忘れられないが、その行為の最中でさえ、一郎はさもそれが、事務的な作業であるかのように黙々とこなしていた印象がある。それに先日、一郎の『助手』を名乗っていたあの女子大学生、山泉純が指摘していたように、確かに彼はトモヤと顔の造りが似ている。そのあたりも、彼女が一郎から受ける印象に、多少の影響を与えている感はあった。

 
「ここの研究室は、あの、お兄さんの部屋なのですか?」

 カナは話題を変えた。
「お兄さん………」
 一郎は言葉につまり、ごほん、と咳払いをした。
「あー、いや、ゴメン。ちょっと、不意打ちだったものだから…………研究室? そうだね、本来、僕みたいな院生が、こんなところに部屋を構えるなんてあり得ないことなのだけれど、ま、来年から一応助手としてこの学校に残るし、いろいろとね」
「呼び方、変えましょうか?」
「いや、別に、それで構わない。僕は男の兄弟しかいないからさ、当たり前だけど、女性にそういった呼ばれ方をしたことがないんだ。それで、少々面食らってしまった。かといって、一郎さん、では違和感があるし、神崎さん、だとトモヤと混同する。君が選択した呼び方が、もっとも妥当だ」
 カナはそこでくすっと笑った。
「なにか、可笑しかった?」
 片眉をあげて、一郎。
「いえ、別に………お兄さんは、いつもそんなしゃべり方なんですか?」
「いや、いつもではないよ。目上の人などには、ちゃんと敬語を使って話す」
 一郎は大まじめに答え、またカナがくすくすと笑う。彼はわからない、という風に首をかしげ、
「箸が転げても可笑しい年頃だね。そう、話を戻すけれど、今日、とりあえず田中 麗香を実際に実験してみようと思ってるんだ。トモヤは部活の合宿で明後日まで帰って来ないから参加は無理だが、良かったら今から一緒に行くかい? 無論、君が彼女に見られるといったような心配はない。とはいえ、あまり趣味の良い見せ物ではないから、無理にとは………」

 
「………いえ、行きます」

 
 カナは目をあげて、きっぱりとそう言った。
    

 

 

 

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