第三章

 

 

「ふーむ、なるほどな」

 
 ソファに座った弟とその彼女を見据え、デスクに腰掛けたトモヤの兄、神崎 一郎は、うまそうにタバコを吸いながら、脚を組んだ。
「どうぞ」
「あ、すいません」
 女性にコーヒーを勧められ、恐縮する2人。

 ムリもない。

 今目の前にいる、ワンピース姿のものすごい美人は、つい数分前、長机の上に縛られて、一郎と激しく交わっていたのだ。

 彼女の顔をみると、どうしてもあの衝撃的な初対面のシーンが頭に浮かび、股間の隆起を抑えるのに苦労する。

 
「話は分かった。要するに、そこの、えー…………」
「カナです」

 少女が目を伏せたまま言った。
「ああ、そうそう。カナ君が不良達に輪姦され、トモヤとしては仇討ち…………復讐をしたいと願っている。そういう趣旨の話だな?」
「ああ、そうだ」
 トモヤがぐっと身を乗り出す。
「兄貴なら、昔からメチャクチャ顔広いし、そういうの、手伝ってくれる人間も知ってるだろう? 金はいくらかかってもいいよ、俺、働いて必ず返すから。あいつらだけは、絶対に許せないんだよ! 手を貸してくれ!」
「復讐、ねぇ………」
 一郎は片方の眉をあげ、おちかけた銀縁の眼鏡をつい、と指で直す。
「はっきりいって、あまりオススメしかねるな」
「どうして!」
 バン、とテーブルを叩くトモヤ。

 カナはびくっと身体を震わせ、やめろ、というようにトモヤの腕を引っ張った。

 一郎は、眉1つ動かさず、弟の顔を見る。

「んー? だって、馬鹿らしいだろう、そんなもの。だいたい、復讐というからには、半端にやったんじゃダメだぞ。逆に、後からまた復讐される危険が発生するからな。分かるだろう、トモヤ。連中が馬鹿たるゆえんは、お前に復讐という動機を与えてしまったことだ。あたら構わず好き勝手にやっているように見えるが、そういった連中は知らず知らずのうち、お前のような人間から恨みを買い、やがて報いを受ける。ほっといたって、ああいう手合いは勝手に自滅するものだ。わざわざお前が手を汚してやる必要は皆無だな。貴重な時間とエネルギーの無駄だぞ。そんなヒマとパワーが有り余っているなら、その分を彼女に使え。その方がよほど建設的、かつ前向きだ」
「で、でも! それじゃ、カナが………ッ!」
 歯ぎしりし、トモヤが呻いた。

 その少年の手を、カナの柔らかい手がそっと覆った。
「では聞くが、そこの彼女は、あー…………そのうすら馬鹿共に、復讐したいと思っているのかな?」
「……………………わたしは」
 カナが、そっと目を一郎に向け、静かに呟く。

 
「わたしは、あいつらを、あの女を、殺してやりたい」

 
 冷静な殺意。

 そのあまりの冷たさに、隣のトモヤでさえ、ぞくっとなる。

 逆に、一郎はその答えを聞いて、その表情の乏しい顔に、初めて笑みらしきものを浮かべた。
「なるほど」
 一郎は立ち上がり、研究室の中をぐるぐると歩き始める。
「女…………というのは、えー、その馬鹿共の親分の、情婦のような女子高生のことだね。しかし殺すとなると、それなりのリスクは覚悟しなくてはならないよ、カナ君。日本の警察はあれでなかなか優秀だから、完全犯罪を成し遂げる確率は低い。未成年だからそれほど重い罪にはならないとはいえ、君はそんなくだらない人間の為に、その先の将来全てをフイにする事になる」
「で、でも………」
 言い返そうとして、カナは一郎の目線に屈し、俯いてしまった。
「先生」
 そこで、例の彼女、一郎の『自称』助手の純が言葉を挟む。
「だから先生はやめてっていってるでしょう山泉君。なに?」
「その不良女子高生、先生の研究テーマに使えるのではないでしょうか」
「ん? ……………………あぁ、あれか。成人前の女性の、精神抵抗力及び環境適応能力についてのアレ? ふん…………確かに、未成年の女性というのは、なかなか実験対象として扱い難いという現実はあるな。ついでに可愛い弟の仇討ちにも協力し、その彼女のカナ君の心の平和も回復させ、か。山泉君、もしかして君、トモヤのこと気に入った?」
「ええ」
 純はにっこりと無邪気に微笑んだ。
「先生に似て、とってもハンサムです」
 面と向かって年上の女性にそんなことをいわれ、トモヤは赤面した。

 そんな彼を、カナはむっとした顔で睨む。

「あ、そう。似てないと思うけれど…………まぁいいや。よし、その不良の女子高生を僕の実験に使用しよう。そうなると例の、脳みそを地面に落っことしてきた類の連中が邪魔だな。連中には、そうだな…………その実験対象の女子高生を軸に利用して、仲間内で勝手に自滅してもらおう。それで、いいかな?」
「え、でも、それ、どういう…………」
 トモヤが言いかけたところで、純がその肩に手を置いた。

 彼女は優しい目でトモヤとカナを見つめ、囁く。
「大丈夫…………先生に任せておきなさい」
 赤い紅を引いた唇が、若い少年と少女に暗示をかけるように動いた。

 
「その女はもう、おしまいよ」

 

 

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