第十一章

 

 

 

 

 極限状況下において、キリコの思考は逆に冷たく冴え渡っていた。

 もうどうでもいい。

 このまま一生便器女にされようが、手足もぎ取られて精液処理機にされようが、どうでもいい。

 妹ともども、地獄に堕ちても構わない。

 でも。

 

 あの悪魔に一矢報いるチャンス、これだけは逃さない。

 

 目隠しされ、男子便器に備えられたキリコ。

 その男達の尿と精液で汚れた顔に、精気が蘇った。

 

(暴露してやる! あの女の本性を、この、何も知らないマヌケに…………!)

 

「ねぇ、ちょっと、何か言ってよ、誰にされたの? こんなヒドイ事……」

 

(───────今、言う!)   

 

 

「ちょっと、タクヤぁ〜! おっそいよぉ、オシッコなんて、すぐ終わるでしょー」

 

(!)

 

 悪子の声が、男子便所の中に響いた。

「ちょ、だ、ダメだよぉ、あっちゃん! 男子トイレ入ってきたら!」

「んふふ〜、いいじゃん。どーせこんな時間、誰もいないって。ほら、オシッコしてみ♪ 見ててあげる…………」

「ば、馬鹿! そ、そんな、…………それどころじゃないんだよ! ほら、これ! 五木さん、こんなところに…………」

「五木さん〜?」

 悪子の声が、キリコの目の前でした。

「ありゃ。便器の中に女の子の顔がある。何コレ、新しいアート?」
「違うだろ! 誰かに、されたんだよ、これ。は、早く出してあげなきゃ!」

 

「へぇ〜…………確かに言われてみたら、なーんとなく五木さんに似てるっぽいけどぉ〜。あの、五木キリコさん、ですかぁ?」

 

(い、言えない…………)

 

「わ、わたしは、ただの便所女ですぅ…………男の人のオシッコを飲むのが、何より大好きな変態ですぅ…………」

「お、五木さん!」

 少年の、驚いたような声。

「誰かに、ここに閉じこめられちゃったの?」

「い、いえ…………自分で、勝手にやっているんです。オシッコ大好きの変態便器になるのが、わたしの歓びなんですぅ…………」

 

 震える声で、キリコは言った。

 

「…………だってさ。タクヤ、オシッコ、出してあげたら」

「い、いいよ…………」

 気まずそうな声で、タクヤ。

「まぁ、五木さんに似てるっぽいけどぉ〜、五木さんなわけないよぉ。彼女が、こんなド変態なわけないもん。じゃあ、タクヤ。隣の、変態さんのじゃない、普通の便器でしゃーっとやっちゃいなさい」

「い、いやだよ。ぼ、僕、家に帰ってするから」

「だーめ。まだ家まで距離あるって。タクヤ、我慢できないっていってたじゃん。膀胱炎になっておチンチン腐っちゃうよ」

 悪子の執拗な押し。

 渋る少年。

 が、やがて折れたのはタクヤの方だった。

 

 じょろろろろろ…………

 

 キリコの便器の隣で、タクヤの尿が飛沫く音。

 

「わぁ! ちょ、ちょっと! 見ないでって、言ったのにぃ!」

「ん〜………昔、一緒にお風呂入った時と、形ちょい変わってるね。先っちょ、膨らんでる? もしか、勃起?」

「ち、ちが、うよ…………いいから、あっちゃん、向こう見てて!」

「はーい」

 

 やがて2人は去り、キリコは1人、男子便所の便器の中に取り残された。

 静かな公衆便所。

 外で、リーリーと虫が鳴いている。

 静寂。

 便所女の自分。

 

「……………………うっ…………うぅっ…………ひっ…………あぁぁああ…………ああああああぁ…………」

 

 嗚咽を漏らし、少女は静かに泣き始めた。

 

 さっきまで、こんなに悲しくはなかった。

 何十人、何百人の尿と精液を飲まされても、どこか機械的にそれらを処理する自分がいた。

 しかし…………

 

 普通の恋人同士のやりとり。

 

 地獄の中で、ふっと見せつけられた日常の幸せ。

 その対比が、キリコの壊れかけた心を正気に引き戻し、悲しみを蘇らせたのだ。

 

 誰も来ない公衆便所。

 1人、少女は目隠しの下で、ただ涙を流し続けている。

 

 

 

 

 やがて、男子便所に気配。

 

「やほー。さっきはナイス返答だったよぉ〜、五木さん♪ あ、もう五木さんって他人行儀だナ〜。キリちゃんって呼ぶね。わたしの事は下の名前の愛称で、かわいーく『あっちゃん』て呼んでぇ。 えっとねぇ〜…………とりあえず、どーだった? 1日便器やってみた感想」

 

「…………うぅ…………ひっ…………み、みじめ、でした」

 

 消え入るような声で、キリコ。

 

「そりゃそうよねぇ。画面で見たけど、男達ってめっさエグイよねぇ。鼻の穴にまで射精してやんの。もう呼吸するたびに、精液の臭いするんじゃなぁい? まぁいいや、じゃあキリちゃん、タクヤとわたし、イジメたこと、反省してる?」

「は…………はい…………は、反省、して、ますぅ…………ぅう」

「んー。大変よろしい。じゃあねぇ、もうキリちゃんは帰る家ないからぁ、わたしの家で妹のトモカちゃんと一緒に暮らしなさい。家族が増えて、わたしも嬉しいよぉ〜」

「は、はい…………あ、ありがとう、ございます」

「あ、学校とかじゃ、ちゃんと普通に喋ってよ。でさぁ、一緒に暮らすからってわけでもないんだけどさ、トモヤとわたし、ばっちりくっつくように、色々バックアップしてくれない? あいつ、奥手でさぁ、あんだけプッシュしてんのに、なーんか踏み込んで来てくれないってかさ。わたしの事好きなのはモロバレなんだけどぉ〜、その最後の一歩? それをこう、ナチュラルな感じで進めるよーにさ、キリちゃんが何げにフォローしてくれると、嬉しいんだぁ」

 

「…………はい。わ、わたしで良ければ、協力、させていただきますぅ…………」

 

 もはや、彼女に抵抗する気力は失せていた。

 便器女としての1日。

 何百本ものペニスに奉仕する自分。

 

 悪子とトモヤとのやり取りで、それが増幅された惨めさとなってキリコを徹底的に打ちのめしていたのだ。

 その夜を最後に、五木キリコは真成寺悪子の、忠実な僕としての人生を歩みだした。

  

 

 

 

 

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